ＴＨＥ ＧＥＮＴＬＥ ＤＲＡＧＯＮ
ＳＩＤＥ ＳＴＯＲＹ ５１ 「ＦＯＵＲ ＳＥＡＳＯＮＳ ”ＡＵＴＵＭＮ”」
ＳＣＥＮＥ１
「……ということで、おしまい」
「やっとわかったよ。ありがとう」
「ありがとう。リュウが講義をすればいいのよ。ウィリアム先生の代わりに」
公園のベンチで、リュウイチは大学の『同級生』パティとラリーに、数学の講義の解説をし終わったところだった。３人とも無事に４年生に進級している。
「どうしてあの先生の講義を、今年もとらなけりゃならないんだろうな」
「そんなものだよ、人生なんて」
パティとラリーはふき出したが、もうすぐ１１歳になるリュウイチはおおまじめだ。
「さあ、チョコレート・パフェを食べに行きましょう」
「ごめんね、いつもおごってもらっちゃって」
パティはリュウイチの頭をなでた。
「何言ってるの。リュウに教えてもらって、私たちはとっても助かってるわ。チョコレート・パフェなんて安いお礼で気が引けちゃうのは、こっちのほうよ」
「あっ！」
リュウイチは思わず声をあげた。１０メートルほど離れたベンチに座っていた背の高い老人が、立ち上がろうとして倒れたのだ。いきなり走り出したリュウイチに驚いたラリーとパティも、状況を理解し、老人の元へ駆けつける。
リュウイチは手を老人の首にあてた。脈はあるし呼吸もしているが、意識がない。急いで病院に運んだほうがよさそうだった。
ＳＣＥＮＥ２
「グリーン先生！」
カーテン１号から出てきたグリーンに、リュウイチが駆け寄る。
「おじいさんの具合はどうですか？」
「リュウが運んできてくれたんだって？」
「ええ、友だちと一緒に。友だちは用事があるので帰りましたけど」
「倒れた直接の原因は貧血。いろいろ精密検査が必要だろうね」
「意識はもどりましたか？」
「まだだけど、今輸血をしてるから、もうすぐ覚醒すると思うよ」
ＳＣＥＮＥ３
「グリーン先生、カーテン１号のおじいちゃんの意識が戻った」
「今行く。あ、ヘレエ、検査結果は？」
「届いてるよ」
「カウンティＥＲのドクター・グリーンです。ええとお名前は？」
「クラーク・エバンス」
「エバンスさん。あなたは公園で倒れて、こちらに運ばれてきたんです」
グリーンは、検査結果を確認しようとした。
「悪性リンパ腫なんだ。肺ガンが転移してね」
「……え？」
「余命はよくもってあとふた月。ちゃんと知ってるから、なぐさめはいらないよ」
「……はあ」
「誰が救急車を呼んでくれたのかな？」
「あ、ええと、公園にいた大学生が自分の車で運んで来たんです」
「もう帰ってしまったんだろうね。お礼が言いたかったんだが」
「ひとり残ってます。呼んで来ましょうか」
「たのむ。……私の病気のことはふせておいてほしい」
「わかりました」
ＳＣＥＮＥ４
「初めまして、リュウイチ・ロマノです。お加減はいかがですか？」
「……大学生？」
「彼は飛び級してるので……４年生なんです」
「へえ、そりゃすごいなあ。専攻は？」
「数学です」
「私はクラーク・エバンス。世話になったね。ありがとう」
「いいえ、どういたしまして」
「ちょっと風邪気味なだけなのに、このざまだ。年は取りたくない」
エバンスは肩をすくめた。
「もう家に帰れるんですか？」
「うん、もう少ししたら輸血がおわるから。ご家族を呼びましょう」
「家族はいない。ひとり暮らしなんだ。いいよ、タクシーで帰るから」
「じゃあ、僕、おうちまで一緒に行きます」
「大丈夫じゃよ」
「でも、また倒れたら」
「エバンスさん、付き添いがいないのなら、退院できませんよ」
「む……じゃあ、お願いするとしようか」
ＳＣＥＮＥ５
「どうもありがとう。今お茶でもいれるから、ソファーに座っててくれ」
「あ、僕がやります。それとエバンスさん、何か食べるものも作りましょうか？」
「そんなことまで頼んじゃ悪い」
「いいんです。僕、いつも家でやってますから」
「それじゃあ、材料はそのへんのものを適当に使って。よかったら君も一緒に食べてくれ」
エバンスはソファーに横たわった。実は疲れはてて、もう、一歩も動けないくらいだったのだ。
「エバンスさん」
「う？ああ……すっかり眠ってしまっていたらしいな」
エバンスは目をこすりながら、ゆっくりと身体を起こした。リュウイチが背中を支える。
「ご気分はいかがですか？」
「とてもいい」
輸血のせいで、だいぶ気分はよくなっていた。
「よかったら、お食事召し上がってください」
「ありがとう……いいにおいだな」
ＳＣＥＮＥ６
「これはうまい！」
エバンスはチーズ・リゾットを口に運び、目を丸くした。
「お口にあってよかった。病気のときに、いつもパパが作ってくれるんです」
「リュウはパパと暮らしてるんだな」
「ええ、去年の秋にママと義理のパパが亡くなって、パパに引き取ってもらいました」
「そうだったのか……」
リゾットがおいしかったので、思いがけなく食が進んだ。
リュウイチがデザートを運んできた。リンゴの甘煮をクレープ生地で包み、ブランデーをきかせたチョコレートソースをかけてあった。
「へえ！こんなものができるなんて！……これもうまいな」
エバンスは感心しきりである。
満足の吐息をもらしながら、エバンスはミルクティーをゆっくりと飲んだ。リュウイチはためらっていたが、意を決して口を開いた。
「あのう、エバンスさん……向こうの部屋のピアノ、ベヒシュタインですよね」
エバンスが、少し上目づかいにリュウイチを見つめる。
「弾きたいのか？」
「ええ、できれば」
リュウイチがあまりに真剣なので、エバンスはほほえんだ。
「どうぞ」
「ありがとうございます！」
ＳＣＥＮＥ７
家にあるシュウの形見のピアノはスタンウェイ。ベヒシュタインは、見るのも弾くのも初めてだった。その透明感のある伸びやかで重厚な響きが、リスト、ドビュッシーなど、多くの音楽家に愛されたというベヒシュタイン。リュウイチの胸は高鳴った。
リュウイチは、リストの『ラ・カンパネラ』を弾き始めた。
『すごい！なんて音が出るんだろう！このピアノ！これがベヒシュタインなんだ！』
最初はピアノのくせがわからず手探り状態だったが、じきにこつをつかみ、自由に音を繰れるようになった。リュウイチは、たちまちこのピアノのとりこになってしまった。
ガシャン！と音がした。エバンスが紅茶のカップを置いたのだ。中身が受け皿にこぼれたがそれにはかまわず、ほとんど小走りでピアノ部屋に向かう。
一心不乱に弾いているリュウイチのじゃまにならないように、エバンスはそっと部屋のすみにあるいすにすわった。
『なんということだ！……確かな演奏テクニック、豊かな表現力、そして神々しいまでに澄みきったこの音色……この子はいったい何者なんだ？』
ＳＣＥＮＥ８
興奮を抑えきれないエバンスは、演奏を終えたリュウイチの肩をわしづかみにした。
「リュウ、どこでピアノを習った？」
「……義理のパパに」
「義理のパパの名前は？」
「シュウ・タカミザワ」
エバンスはほうっと息をはいて、いすにすわった。興奮したせいで、息が苦しい。ゆっくり深呼吸をして、呼吸をととのえた。
「シュウ・タカミザワ……『ショパンの名手』か……」
『確か、イクコの弟子だったはず。”ガールフレンドが月変わりなのよ。すごいでしょ。まあピアノの腕は確かだから、いいんだけどね”と言っていたっけ』
「シュウ・パパをご存知なんですか？」
「知り合いの教え子だ。……リュウ、よかったらこのピアノを弾きに来ないか？」
リュウイチの顔がぱっとかがやく。
「いいんですか？」
「ああ、私も君のピアノが聞きたい。……月水金の午後っていうのはどうかな？」
「はい、おうかがいします！ありがとうございます！」
ＳＣＥＮＥ９
リュウイチは週に３回、ピアノを弾きにエバンスの家へ通った。エバンスの家までは、自転車で２０分くらいかかる。運動オンチのリュウイチだが、自転車にはなんとか乗れたのだ。
『よかった、僕、自転車に乗れて』
去年ロマノに買ってもらった赤い自転車をこぎながら、リュウイチは思った。
弾く曲はエバンスがリクエストし、演奏が終わると、ひとことふたことアドバイスをくれる。それはかなり専門的なものだったが、リュウイチは水が大地にしみこむように吸収し、自分のものにしていった。
弾き終わると、ティータイムになった。その後エバンスのために簡単な食事の用意をして、リュウイチは帰宅する。
エバンスは、人生の終わりに思いがけなくあたえられた贈り物に感謝していた。リュウイチに教えたいことは、まだいくつか残っている。それまでは生きていたいというのが、今の彼の、たったひとつのささやかな願いだった。
ＳＣＥＮＥ１０
「おひさしぶり！私のかわいいおちびちゃん！」
ＥＲの受付で、治療をした外傷患者のカルテを書いていたロマノは、ぎくっとして顔をあげた。
「聞こえなかった？私のかわいいおちびちゃん」
その大柄な女性は、いきなりロマノを抱きしめた。受付では、ウィーバーとランディが、あんぐりと口を開けている。
「や、やあ、ビッキー。おひさしぶり」
抱きしめられながら、ロマノは引きつった笑いを浮かべた。
「学会がシカゴであったの」
「じゃあ、オフィスへどうぞ。コーヒーでも入れるから」
ロマノは、ウィーバーに女性を紹介した。
「こちらはドクター・オルポート。私の古い友人だ」
ＳＣＥＮＥ１１
「いきなりでおどろいたよ、ビッキー」
ロマノはビクトリアの前にコーヒーの入ったマグカップを置きながら、心の中でため息をついた。ビッキーに『私のかわいいおちびちゃん』と言われて抱きしめられたことは、今ごろＥＲ中、いや、病院中のうわさになっていることだろう。
「あなたをびっくりさせようと思ったの、ロバート」
ビクトリアはぺろっと舌を出して笑った。その表情は、ずっと昔、彼女がジュリアンのガールフレンドだったころをほうふつとさせた。ビクトリアはハーバードの医学部に進み、救急医になった。今はニューヨークに住んでいる。
ロマノはかぶっていたバンダナを取り、コーヒーをすすった。ビクトリアがため息をつく。
「私のかわいいおちびちゃんが、ハゲちゃうなんて思いもしなかったわ。ねえ、どうして？」
「それは俺のほうが知りたい」
「パパ！」
飛び込んできたリュウイチを、ロマノはどなりつけた。
「入ってくるときは、ノックくらいしろ！」
「ごめんなさい」
ビクトリアが目をまん丸にして叫ぶ。
「……シオンにそっくり！どうして？」
「シオンと俺の息子のリュウイチだ。シオンが亡くなって、去年ひきとった。リュウイチ、こちらはドクター・オルポート」
「はじめまして、リュウイチです。リュウって呼んでください」
リュウイチはにっこり笑った。
「まあ！私のかわいいおちびちゃん第２号だわ！よろしく、リュウ」
ビクトリアは、リュウイチを抱きしめてキスをした。
「第１号は誰ですか？」
「ビッキー！」
「あなたのパパよ」
「えーっ！うそっ！」
ＳＣＥＮＥ１２
リュウイチは、ソファーでワインを飲んでいるロマノとビクトリアにあいさつをした。
「じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみなさい、リュウ」
「おやすみ。ちゃんと歯をみがけよ」
「は〜い」
ビクトリアは、にやにやしながらチーズをつまんだ。
「どうかしたのか？」
「昔、ロバートも言われてた。歯をみがきなさいって」
「そうだったか？」
「ロバートがパパになるなんて」
「自分でも意外だ。今でも信じられない」
「急だったんだものね」
「夕食のビーフシチュー、なつかしかったわ。シオンがよく作ってくれた」
ロマノとシオンが付き合っていた最初の年、ビクトリアもボストンに住んでいたのだ。
「シオンがあなたと別れたとき、リュウがおなかの中にいたのね」
「そうなんだ。リュウの誕生日から考えると、別れたとき、シオンは妊娠に気付いてたらしい」
「リュウのことを知ったら、ロバートが自分の夢をあきらめて自分と結婚するだろうってわかってたから、知らせずに別れたんだわ」
「だろうな。だけどあのときはそんなこと、思いもよらなかった」
ロマノは自分のグラスにワインをつぎたした。
「女心のわかんない子ねえ」
「どうも」
「でも、シオンが亡くなっただなんて……」
「飲酒運転のトラックと、正面衝突したそうだ」
「かわいそうに……でも、リュウがいい子でよかったわね。その上優秀だし、かわいいし」
ロマノは顔をしかめた。
「あいつは男のくせに、泣き虫で甘えん坊なんだ」
「子どものころのあなたと同じね、ロバート」
「俺は違う」
「あら、忘れたの？思い出させてあげましょうか？」
「いや、いい」
「リュウのためにも、結婚した方がいいんじゃない？ロバート、だれかいないの？」
「その言葉は、そっくりあなたにお返ししよう、ビッキー」
「あら、私は結婚したくないからしないだけよ。あなたと一緒にしないで」
「俺も結婚したくないんだ。めんどくさい」
「イギリスで知り合った外科医の、なんていったっけ……そうそう、エリザベスが同じ病院にいるんでしょ？」
「ああ、リジーか。あいつはただの知り合いだ」
「うそおっしゃい、私知ってるのよ。彼女があなたの好みだってこと」
「会ったこともないくせに」
「残念でした。今日リュウと病院のカフェテリアにいったときに、エリザベスに会ったの。リュウが、エリザベス先生はグリーン先生と付き合ってるって言ってたわ。他の男に取られちゃってるじゃないの。しっかりしなさいよ、ロバート」
「くそっ！リュウのやつ、明日木につるしてやる」
「何か言った？」
「いいや」
ロマノは首をかしげた。どうもおかしい。調子が狂う。会話の主導権が、ビッキーに完全に握られている。何を言ってもやり込められて、気がつくと、自分は黙って酒をがぶ飲みしている。どうしていつもこうなんだ？
横目でロマノを見ながら、ビクトリアはふふんと鼻で笑った。
「あなたは私にとって弟なのよ。弟はね、お姉ちゃんには一生頭が上がらないものなの。わかった？ロバート」
ＳＣＥＮＥ１３
その日、いつもどおりピアノを弾いて、お茶を飲んだあと、エバンスは言った。
「実は旅行に出かけようかと思ってる。私は寒いのが苦手でね。冬になる前に、いつも暖かいところへ逃げ出すんだ」
「どこへ行かれるんですか？」
「マイアミ」
「いつ？」
「明日」
「ええっ！」
「最近朝晩の冷え込みが厳しくなってきただろう？年寄りにはこたえるんだ」
リュウイチはうつむいた。エバンスがほほえむ。
「春になったらまた会える。それまでうんとピアノを練習しておいてくれ。私が言ったことを忘れないように」
「はい」
帰るリュウイチを、エバンスは玄関で見送った。ぎゅうっと抱きしめ、キスをする。
「元気でな、リュウ」
「ありがとうございました。エバンスさんもお元気で」
リュウイチは自転車にまたがり、手をふった。エバンスもふりかえす。短い秋の日を惜しむかのような見事な夕焼けに向かって走り出したリュウイチの姿は、たちまちのうちに見えなくなった。玄関のドアにもたれて沈んでいく夕日を眺めながらエバンスは、自分が握っていたバトンは、リュウイチに今、確かに託したのだと思った。あとは、穏やかで静謐な死が待っている。不思議な安堵感がエバンスを包んでいた。
「ありがとう、リュウ……さようなら……君の未来に幸あらんことを」
ＳＣＥＮＥ１４
日曜日の午後、ジャック・ブロウという弁護士が、ロマノをたずねてきた。リュウイチにも同席してほしいという。
「コンラート・ドレヴェスというピアニストをご存知ですか？」
ロマノの代わりにリュウイチが答えた。
「ええ、ドイツ人の名ピアニストで、つい１週間ほど前に亡くなりましたよね、ニューヨークで」
「彼は病気で４年前に引退してから、名前を変えて生活していたんです。このシカゴで、クラーク・エバンスという別人として」
思わず立ち上がって叫ぶ。
「そ、そんな！だって僕、ドレヴェスのＣＤ持ってますけど、エバンスさんとは全然違います」
「病気でね、うんとやせたから。肺ガンだった。体重が半分以下になったそうです。すっかり面変わりしてしまって」
「じゃあ、エバンスさんは亡くなったってことですか？」
「ええ」
リュウイチはうつむき、つぶやいた。
「マイアミに行くって言ってたのに」
「ニューヨークの病院へ入院したんです。１２日後に亡くなりました」
「そんな……」
リュウイチの目に涙が盛り上がる。気遣わしげにロマノがリュウイチの肩を抱き、頭にキスをした。
「ドレヴェスさんはリュウイチ君に、ベヒシュタインのピアノを遺したんです」
「なぜ息子に？」
「リュウイチ君は神様が最後に自分にくれたプレゼントだと、彼は言ってました。おかげで、人生の最後を有意義に過ごせたって。その感謝の気持だそうです」
「しかし、そんな高価なピアノを」
「これは正式な遺言書によるものです」
ＳＣＥＮＥ１５
家に運び込まれたベヒシュタインのふたを開けたリュウイチは、カードが置かれているのを見つけた。
『私の最後の弟子リュウに、このピアノを贈る。
コンラート・ドレヴェス』
リュウイチは鍵盤をそっとなでた。エバンスの笑顔が目に浮かぶ。涙があふれ、鍵盤をぬらした。さんざん泣いて、もうかれたと思ったのに、いくらでも涙って出るんだなと、リュウイチは泣きはらした目で思った。そう、去年と同じ……。
しばらくして涙をふくと、リュウイチはピアノを弾き始めた。曲は『ラ・カンパネラ』。その澄んだ音色は、きっと空のかなたへも届くに違いない。
『楽しいとき、そして悲しいとき、これからもずっと僕は、弾き続けるだろう。ピアノは僕の”ｌｉｆｅ”だから……』
ＳＣＥＮＥ１６
『…………それからヨハン、ウィーン音楽大学に寄贈しようと思っていた私のベヒシュタインだが、１１歳のアメリカ人の少年にプレゼントすることにしたんだ。命が消える間際に、彼のような天才にピアノを指導できたことを、神に感謝してる。でも、ただひとつ心配なのは、彼自身もまわりも、その才能に気付いていないということだ。彼はピアニストにはならないらしい。別にそれはかまわないんだが、あれだけの才能が埋もれてしまうのはとても残念だ。だからヨハン、私が死んで１年しても彼が世に出ていなかったら、君が引っぱりだしてやってくれ。その少年の名前は、リュウイチ・ロマノという。いくら君でもきっとたまげるぞ。リュウのピアノには。君のタクトでリュウがピアノを弾く日を、天国で楽しみにしてるよ。…………』
『カイザー』ことヨハン・クローゼは手紙を読み終わると、深いため息をついた。手のけがでピアノが弾けなくなり、失意のどん底にいたクローゼに、指揮者になることをすすめてくれたのが、音大の２つ上の先輩、ドレヴェスだったのだ。
「コンラート……どこへ雲隠れしたのかと思ったら、シカゴにいたのか……リュウイチ・ロマノ……安心してくれ。忘れないよ、君の最後の弟子のことは」
窓越しに月を見上げるクローゼの目に、涙が光った。
ＴＨＥ ＥＮＤ
お読みいただきありがとうございましたm(_
_)m
『ＳＩＤＥ ＳＴＯＲＹ』５０話記念特別企画第３弾、リュウイチ１１歳の秋の日の物語です(^^)
前話に登場していたジュリアンのガールフレンド、ビッキーことビクトリアに再登場してもらいました(^^)
次回はまた書けたらＵＰいたしますので、どうぞよろしくお願いいたしますm(_
_)m